比企起業大学 学長の風間です。
2025年2月25日(火)、ときがわ町起業支援施設iofficeにて、法政大学グローバルMBA(GMBA)「地域インターンシッププログラム」のときがわ町チームの4人から、現地活動報告をいただきました。
法政大学GMBAの地域インターンシッププログラムの受け入れは、2022年度から開始して今回が3年目となります。
1年目のテーマは「起業」、2年目は「女性と起業」、3年目となる今回は「観光」をキーワードに行われました。
「観光」がテーマということで、比企起業大学の卒業生であり、sherpaでゴムカヤックやトレッキングツアーなどの事業を行っているトムさんにもご協力いただき、12月には現地フィールドワークも実施しました。
【12月の現地フィールドワークの様子】
・法政大学大学院グローバルMBA 24年度インターンシップ学生が、ときがわ町に来てくれました。 | 比企起業大学




ちなみに2月26日(水)には大学院内での最終報告が行われるそうです。
そちらには参加できず申し訳ないのですが、そのぶん気合を入れて拝聴しました。
研究報告
2月25日の研究報告の内容を、差し支えのない範囲で書き留めておきます。
(大半は英語での発表だったため、理解が追い付かないところもありましたが、理解の限りで恐縮です・・・)
タイトル「持続可能な発展への道 -ときがわ町でデジタルノマド生活- 」
1 ときがわ町の課題と魅力(担当:ジェリーさん)

●ときがわ町の課題
・人口減少
・公共交通の利便性の低さ
・高速インターネット環境の不足(公共wifi)
・地域の企業と行政の連携が不十分
●ときがわ町の魅力
・東京に近い(車で約1時間)
・生活費が安い
・静かな環境、自然豊かでリモートワークに最適
・開発可能性、ビジネス誘致
●デジタルノマドの動向
・パンデミック後に拡大
・低い生活費、東京への近接はデジタルノマドにとって魅力
・静かで美しい自然は仕事に集中するために理想的
●経済的・社会的インパクト
・賃貸不動産需要が活性化
・飲食店への経済効果
・若い労働力が増える
・教育施設の需要が高まる
2 デジタルノマドを受け入れるための方策(担当:Jimmyさん)

●必要な支援
・支援制度 住宅、ビザサポート、国際イベントの開催、企業との連携
・福岡市の事例
→ 市がデジタルノマドのためのコワーキングなど働く場の確保、起業などをサポート、地域コミュニティとの交流イベント
●活用するリソース
(1)物理的なリソース
①wifi
・無料のwifiが東京にも地方にも少ない
・デジタルノマドや観光客向けのレンタルサービス
・駅前にsimカード、ポケットwifi、スターリンクがあるといい
・四季彩館、木のむらキャンプ場などにも
②コワーキングスペース(働く場所)
・良い雰囲気の場所
・四季彩館は電源とwifiがあればコワーキングスペースとして使える
・古い建物を多目的なワークスペースにしている事例(豊岡市「とど兵」)
https://todohyo.com/
・アーティストや民間企業、大学と一緒にリノベーション
・古いレストランを多目的施設に改修(コワーキング、カフェ、レストラン、会議、クラブなど)
③交通
・レンタサイクルがない(インターネットで見つからなかった)
・乗合タクシーはあるが、英語の説明がない、インターネットで予約が完結しない
(2)バーチャルのリソース
●SEO
・探しやすいサイトにするための方策
①「OGAWA」
・Googleトレンドで「小川町」の人気度は「ときがわ町」の4倍
・埼玉県では小川町は移住で一番人気
・小川町に近いことを利用して、「小川町」というワードを入れる
・小川町には1つだけ温泉があるが、ときがわ町には3つ温泉がある
・小川町に住んでときがわ町にも来てもらう
②Artist
・「純烈」の聖地巡礼で、2年前くらいにときがわ町にロケに来た
・「ときがわ町」の名前が出ていなかった
・ときがわ町の実績として文字や写真を残す
③ハイクオリティな写真
・sherpaのWEBサイトやSNS、アクティビティジャパンに掲載
・インターネットでいい写真を見られるようにしておく
3 具体的な取組の方向性(担当:Jeffさん)

●3つのポイント
①コストコントロール・・・特に初期段階では低投資で最小限の財務リスクでプロジェクトを実現することが重要
②資本投資・・・政府の支援制度や企業との提携を積極的に活用し、資金調達
③多様な収益化・・・複数の収益源を確保し、長期的な安定性を維持する
●4象限の資本投下と収益のパターン
①軽資本・短期リターン
・例えば空き家や旧校舎を再利用し、レンタルスペースやコワーキングスペースに転換することで、最小限の投資で初期コストを抑えながら事業を立ち上げる
②重資本・短期リターン
・高速インターネット、交通網、住宅などの基盤整備への投資が鍵
・インフラを強化することで、より多くのデジタルノマドやリモートワーカーを呼び込むことが可能
③軽資本・長期リターン
・不動産投資信託(REITs)などの金融ツールを活用し、資金流動性を高め、持続的な成長を促進する
・また、コミュニティ主導型のエコシステムを確立することで、デジタルノマドや投資家のさらなる参入を促進する
④重資本・長期リターン
・ブランド戦略と産業拡大を進め、ときがわ町を「プレミアムなリモートワーク拠点」として確立する
・サービスやインフラを戦略的にアップグレードすることで、不動産価値を最大化し、長期的な経済的影響を生み出す
・資本の大小、リターンの短期・長期を組み合わせて考える
・成功事例 「軽井沢」
①自然を活かしたウェルネス環境
・森林、温泉、アウトドアアクティビティを活用し、リフレッシュできるワークスペースを提供。
②文化的な没入体験
・地元の伝統を保存しつつ、長期滞在者向けに深い文化体験を提供。
③テクノロジーを活用したソリューション
・自動予約システム、デジタル決済プラットフォーム、コミュニティ連携ツールなどを導入し、利便性を向上。
④アテンション・エコノミー(注意経済)
・デジタルノマド市場のトレンドを活用し、戦略的なマーケティングとメディア露出を通じて収益化。
⑤AR & AIの統合
・拡張現実(AR)や人工知能(AI)を活用し、ユーザー体験を向上。
⑥金融イノベーション
・気候信託や不動産投資信託(REITs)などの金融ツールを活用し、長期投資を誘致。
●ときがわ町の収益モデルの提案
①収益性の向上(高付加価値サービス+コスト管理)
・デジタルノマド向けにカスタマイズされたプレミアムサービスを提供。
・時間単位、日単位、月単位など、柔軟な料金戦略を導入。
②資産活用と資本効率の最大化
・未活用資産を有効活用し、その経済価値を最大化。
・空間と時間の効率性を向上させ、運営キャッシュフローを最適化。
③公的支援の活用とリスク管理
・政府補助金や民間投資を活用し、低コストの資金調達を実現。
・収益源の多様化と戦略的パートナーシップにより、財務リスクを軽減。
4 中国人デジタルノマドの可能性(担当:Castielさん)

・最終目標は世界中のデジタルノマド
・まずは中国人のデジタルノマドに絞る
・中国人デジタルノマドがなぜときがわまちにとって魅力か?
①大きな市場
②高い消費力
③イマ―シブ体験を好む
④年間を通じた旅行パターン
●発信方法
・中国特有のSNSを活用する必要がある
●中国人デジタルノマドを引きつけるために必要なもの
①Authentic Experience
②Convenient Payment
③Social Media インフルエンサー
質疑応答

Q 豊岡市の「とど兵」の運営主体は?
A 民間。YouTubeでも映像を見られる。働ける場所があるということが重要
Q 軽井沢の事例も民間主体か(「運営チーム」とは)?具体的にどんなことをしている?
「軽井沢」は認知度の高い町。福岡市も大きな町。軽井沢も福岡もときがわ町とは条件が異なるので、ときがわ町で始める場合、どんなことからはじめるといいかということがわかるといい
A 現時点では回答できず。ただ軽井沢の事例は重資本・長期リターンの状態にあるので、そのままは真似できない。最初は投下できる資本もないので、軽資本・短期リターンを目指すのがいい
Q トムさんの会社でやろうとするとき、なにから始めたらいいか?
A まずはSEO。「小川町」や「ときがわ町」のキーワード、いい写真。ほかはTomさんの会社だけではできない。全体的な取組が必要。他の観光施設との連携。
たとえば観光施設にwifiを設置する。短期的には利益はないが、デジタルノマドに来てもらう最低限で最重要な条件は「wifi」と「電源」。
四季彩館や木のむらキャンプ場は雰囲気はいいが、電源とwifiがない。
ポケットwifi、レンタルカード、スターリンクなどが選択肢
デジタルノマドに限らず、観光地を選ぶのに台湾ではwifiは最重要
感想

発表を聴いて、私が感じたことをメモしておきます。
●PR方法
・埼玉県では有名な「小川町」が隣にあることは有利
・「小川町に近い」という言葉を使うだけでも検索上は有利になる
・ときがわ町がメディアに出たときなど、地域全体で「ときがわ町」という言葉を使ってPRする
・当たり前のことかもしれませんが、今すぐにでもほぼコストもかからずできることなので、意識的にやっていけるとい
●観光+働く
・「観光」が大きなテーマだったものの、観光にとどまらず「働く」という視点が加わっていたのが新鮮
・デジタルノマドはどこでも働ける
・デジタルノマドに限らず、豊かな自然の近くでリモートワークできる環境を求めている人は多い
・ワーケーションといった特別な機会というよりは、日常的に訪れることのできる田舎、非日常を、東京に近いときがわ町だから提供できる可能性があるのではないか
・町全域に光ファイバーが整備されているが、さらにwifi環境があることが重要
●事業者間同士の連携
・一部の企業を除いて、ときがわ町で事業を行っている方は小規模な事業者が多いので、一人でできることには限りがあります
・そのため、行政と事業者間の連携だけでなく、事業者間同士の連携が重要
・それぞれが良い意味で「勝手に」やりつつも、共通する目標に向かって共創(競争ではなく)していける環境をつくっていきたい

後日、トムさんからも報告に対するコメントをいただきました。
非常に良いクオリティ高い内容だと思いました。
ウチのシェルパの事も取り上げていただけて、外国人目線の意見が聞けてとても参考になりました。
チームときがわの皆さんのおかげで大変貴重なヒントを貰えました。
流石チームときがわの皆さんの賢さに感心しきりです。
また皆さんと関われる事がありますよう願っております。
みなさまお疲れ様でした。
そしてみなさんに出会えた事を感謝致します
ありがとうございました😊
ジェリーさん、Jimmyさん、Jeffさん、Castielさん、11月からの約3か月間、ありがとうございました!
2月26日の最終報告会もがんばってください!